当院外科での初期研修では、緊急症例もたくさん経験します。救急を積極的に受け入れる市中基幹病院ならではの環境です。手術が必要?それは今日中?アプローチは開腹or腹腔鏡?周術期リスクは?スタッフや手術室・麻酔科の都合はつく?・・・外科医は頭の中にさまざまな要素をめぐらせ、治療方針を短時間で判断します。
では、例えば腹部CTの読影レポートを読めば方針が決められるでしょうか?答えは否です。手術適応判断の際、時にはCT画像を放射線科より深く読むことが求められます。外科医が集まってCTをコロコロとスクロールしながら舐めるように見ている光景はひとつの風物詩です。それは今から自分が出発し、無事に帰還せねばならない冒険旅行の地図なのです。
研修医たちは、外科医がまるでおなかの中を透視するかのようにCT所見を語るので目を丸くします。なぜ”見える”のか、それは我々は術中に自分の読影の「答え合わせ」をして、そのフィードバックを日々繰り返しているからです。放射線科の先生に対する一種のアドバンテージと言えるでしょうか。
腹部CTの読影は苦手という人もいるでしょう。外科研修で特に緊急症例の読影の秘訣を学んでもらえたら、ER当直中の急性腹症もこわくなくなるかもしれません。
待機症例を緻密・濃厚に治療する知的な喜びだけでなく、人数が足りなければ研修医やポリクリ学生まで巻き込んで手術室になだれ込む緊急症例で発揮される瞬発力・スピード感、フットワーク、チームプレーも、外科の持つ醍醐味なのです。
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